陸軍動員計画は永久計画と年度計画とに分けられる。永久計画は次期改正まで長期に亘って適用するもので、動員計画の基本に関する規定である。
陸軍動員計画令および同細則がこれにあたる。一方年度計画は年度ごとに制定し、その年度限りの事項ならびに永久計画に準拠し得ない事項を規定する。
年度陸軍動員計画令および同細則がこれに該当する。陸軍動員計画令の改訂および年度陸軍動員計画令を制定を行う時は陸軍参謀総長が立案し、陸軍大臣との
協議が纏まれば勅裁を仰いでこれを陸軍大臣に送付する。(陸軍参謀本部における実施部署は第一部第三課〔編制動員〕である。)
陸軍大臣はこれを軍令として制定施行すべく奉行(御名御璽を仰ぎ、年月日を記入の上副署すること)
する。陸軍大臣が副署するのにも拘らず陸軍参謀総長が立案するのは陸軍大臣現役制が一時廃止されたことに関連する。大正2年に陸軍大臣の現役制が廃止された
ことに伴い予備役将官が陸軍大臣に任用される可能性が発生したため、大正2年の「陸軍省、参謀本部、教育総監部関係業務担任規定」(「省部協定」と略する)
により陸軍大臣の権限を極力制限して、これを参謀本部および教育総監部に移すようにしたためである。
年度陸軍動員計画令が年度初日(4月1日)に施行されるためには動員準備〔召集令状を市役所(市に戸籍がある者用)あるいは警察署(町村に戸籍がある者用)に保管する〕が
完了していなければならない。その期間を見込むと年度陸軍動員計画令は前年の秋には制定されていなければならない。したがって9月制定の場合はこれの勅裁を仰ぐのは
その前月の8月である。この時期天皇は那須御用邸に行幸中なので、陸軍参謀総長は随員と共に那須御用邸に参内して勅裁を仰ぐ。昭和十六年度の場合は
昭和十五年軍令陸甲第五五号「昭和十六年度陸軍動員計画令」(昭和十五年十一月二十二日)
により、昭和十九年度の場合は
昭和十九年軍令陸甲第八三号「昭和十九年度陸軍動員計画令」(昭和十八年八月三十日)
により年度計画が発令された。
本ページでは軍令中の主要な部隊の編制表要約を紹介する。
上記二つの軍令の附表で「常設師団(甲)」・「常設師団(乙)」・「特設師団」の編制が規定されている。 以下の表は軍令中の編制表の一覧表である。
動員計画令 編制表 |
関特演(関東軍特別演習)においては常設師団(甲)が14個師団、常設師団(乙)が2個師団動員された。 これらの編制の概要を下表に示す。
関特演時の師団編制 |
以下は各部隊の編制表要約である。
師団編合ニ入ラサル工兵部隊 |
独立工兵聯隊 独立工兵聯隊(甲)(乙) 独立工兵聯隊(丁) 独立工兵聯隊(戊) 独立工兵聯隊(己) 独立工兵聯隊(辛) |
兵種ガ「工兵」タル諸部隊 鉄道聯隊 野戦測量隊 野戦道路隊 野戦築城隊 野戦作井隊 電信聯隊 独立電信中隊 独立有線中隊其一 独立有線中隊其二 |
師団編合ニ入ラサル輜重兵部隊 |
輜重兵部隊 独立輜重兵大隊(甲)其一 独立輜重兵大隊(甲)其二 独立輜重兵大隊(乙) 独立自動車大隊 独立自動車中隊 架橋材料中隊其一 架橋材料中隊其二 渡河材料中隊 |
戦車部隊 戦車聯隊 其一 戦車聯隊 其二 |
© 2009-2018 MJQ
Last Update 2014/09/01