用 語

ここでは本サイトで使用される用語を説明します。
(厳密性には若干問題があるかもしれませんが)

  

【編制と編成】
編制とは、各級司令部・部隊の「構成」を表す。

  ◆将官・佐官・尉官・准士官・下士官・兵ごとの定員は軍令または軍令に対応する陸亜機密に付属する「編制表」により規定される。
     例 昭和十四年軍令陸甲第一九号「陸軍航空部隊編制」(昭和十四年六月七日)
        JCAHR Ref No C01007715800 (アジア歴史資料センター資料番号)

   陸軍省は各部隊の現況を調査して 「編制人員表」に纏めていた。


  ◆各部隊の兵器から工具に至るまでの装備定数は陸機密等に分類される「兵器定数表」または「諸部隊兵器表」より規定される。
     例 昭和十五年陸機密第五七号「陸軍航空部隊兵器定数表(昭和十五年八月十一日)」
        JCAHR Ref No C01005538200 (アジア歴史資料センター資料番号)


         本兵器定数表によれば航空部隊の定数は以下のとおりであった。
          航空兵団司令部     司令部機1機、連絡機2機、輸送機2機
          飛行集団司令部     司令部機1機、連絡機2機、輸送機2機
          飛行団司令部      司令部機1機、連絡機2機、輸送機1機
          教育飛行団司令部   司令部機1機、連絡機2機、輸送機1機
          飛行戦隊
                偵察  司偵中隊 常用9機、予備3機
                     軍偵中隊 常用9機、予備3機
                     直協中隊 常用12機、予備4機
                戦闘  本部  連絡機1機、輸送機1機、戦闘機1機
                     中隊  常用12機、予備4機
                軽爆  本部  連絡機1機、輸送機1機、軽爆機1機
                     中隊  常用9機、予備3機
                重爆  本部  連絡機1機、輸送機1機、軽爆機1機
                     中隊  常用6機、予備2機(飛行第六〇戦隊以外)
                     中隊  常用12機、予備4機(飛行第六〇戦隊)


 太平洋戦争時の飛行戦隊の定数は、昭和十八年陸亜機密第五一八号「陸軍航空部隊兵器基準定数表」により規定されている。 残念ながらこの陸機密は現存していないが、戦史叢書第102巻「陸海軍年表」によれば同規定による装備定数は以下のとおりであった。 書類上はこの他に戦隊予備として戦隊総数の1/3を保有することになっていた。
             偵察戦隊     9機/1個司偵中隊
                       9機/1個軍偵中隊
                       9機/1個直協中隊
             戦闘戦隊    本部6機+12機/1個中隊
             軽爆戦隊    本部1機+9機/1個中隊
             重爆戦隊    本部1機+9機/1個中隊


編成 には二つの意味がある。
  (1) 一般の意味では編制により各級司令部・部隊を組織すること
  (2) また、大陸命の中では【大陸命と大陸指】に例示された 大陸命第一三六六号別紙第二に示されるように飛行団の「部隊構成」を指す。


一般の意味での編成は陸軍大臣により伝宣された軍令に基づき部隊を構成すること。具体的な「部隊構成」は、軍令中または陸軍大臣から発せられる陸機密等(編成細則)中の編制表により示される。
(実際の編成作業は軍令または陸機密等で指定される編成管理官の下に行われる)
第二〇戦闘飛行集団司令部・教導飛行師団司令部等の編成について両者の例を以下に示す。
昭和二十年軍令陸甲第一〇三号
昭和二十年陸機密第二九三号


【大陸命と大陸指】
大陸命とは参謀総長が伝宣する天皇直隷の指揮官に対する大命の大本営陸軍部発簡番号。(「大本営陸軍部命令」の略ではない)
昭和十二年十一月の大本営設置以降使用。 天皇の命令を参謀総長が伝宣するという形をとるため、末尾に
     「奉勅伝宣      参謀総長 ○○○○ (参謀総長名)」
と記載される。大陸命第一号(昭和十二年十一月二十二日)から大陸命第一三九二号(昭和二十年八月二十八日)まであり、その他に武装解除のための大陸命特第一号〜第三号がある。大陸命以前は日露戦争時より臨参命 として伝宣していた。臨参命は第一号(昭和六年九月二十二日)から第一四四号(昭和十二年十一月十三日)まであった。
臨参命から大陸命への切り替えは昭和十二年十一月二十日の大本営設置に伴う機械的なもので、大陸命第一号に特に象徴的な意味があった訳ではない。 (大陸命第一号は「第三野戦飛行場設定隊ヲ第三飛行団編成ニ編入ス」という、事務的なものである)
大陸指 とは大陸命に関連して参謀総長より出される「指示」。大陸指は第一号から第二五六一号(昭和二十年九月一日)まであるが、その他に大陸命特第一号〜第三号に関連して大陸指特第一号〜第七号、大陸参命第一〜第四号がある。大陸指以前は参命 として指示していた。参名は第一号から第六〇八号(昭和十二年十一月二十二日)まであった。〔統帥権は天皇の大権であるので、参謀総長は隷下の部隊(少数だが存在する)に対して以外は「命令」できず、「指示」の形をとる〕  【編制と編成】で例示した航空部隊を航空総軍戦闘序列に編入する大命を以下に示す。
大陸命第一三六六号


【軍令と軍令陸甲と軍令陸乙】
軍令とは軍隊統帥上の命令。以下の区分がある。天皇の命令を陸軍大臣が伝宣するという形を取る。
軍令第○○号    : 公示すべき軍令の中で、陸海軍共通な事項に関するものの発布に使用する発簡区分
    例 昭和二十年九月十三日 軍令第三号(大本営廃止)
軍令陸第○○号   : 軍令のうち、陸軍固有のものの発簡区分
軍令陸甲第○○号 : 陸軍の軍事機密事項(動員計画・戦時編制等の発布)の発簡区分
軍令陸乙第○○号 : 陸軍の秘密事項(平時編制・諸勤務令等の発布)に関する発簡区分


【編組と編合と編成】
大陸命で以下のように使用される用語である。
編組とは後方にある航空軍(地上部隊では軍以上のレベル)の「部隊構成」を表す。
当該軍が戦場に投入される時、あるいは戦場が近づいた時には編組が解かれ、戦闘序列が発令される。
   例 : 関東軍は大陸命第一三三八号(昭和二十年五月三十日)により編組を解かれ戦闘序列が令された。
編合とは飛行師団・集団の「部隊構成」を表す。陸上部隊でも師団の「部隊構成」を編合と呼んでいる。
軍令により規定された。編成より永続的な意味合いが強い。
編成とは飛行団の「部隊構成」を表す。陸上部隊では旅団の部隊構成は編合と呼んでいる。
大陸命により規定された。編合より臨時的な意味合いが強い。


【隷下と指揮下と区処下】
隷下とはある指揮官に統率・経理・衛生等において隷属する状態にあること。
指揮下とは隷属関係に無くても軍隊区分により、他の指揮官のもとに配属されて「命令」を受けている状態にあること。
指揮関係は隷属関係の限定された一部である。
区処下とは自己の命令系統外の指揮官の「指示」を受けること。
(両者は指揮関係にないので「指示」という形をとるが実質的には「命令」)
当該指揮官の上級司令部と「指示」される部隊の上級司令部との間の協力関係に基づく。
区処という用語は軍隊だけではなく官衙でも用いられる。
   例 : 陸軍航空総監は各学校を隷下において航空教育を所管しているが、人事に関しては陸軍大臣の、
       動員作戦に関しては参謀総長の、教育に関しては教育総監の区処を受ける。


【隷属関係と指揮関係】
隷属関係と指揮関係の例として大陸命第五五五号(昭和十六年十一月六日)等により戦闘序列が発令された南方軍直属航空部隊の一部を下図に示す。 ここで第一〇飛行団は第五飛行集団長の隷下にあるが、第三飛行集団長の指揮下にあった。第一〇飛行団の第三飛行集団長指揮下への配属は 南方軍総司令官の命令によって行われる。ただし、このような指揮権の移動は南方軍総司令官の 統帥の及ぶ範囲内においてのみ可能である。例えば南方軍命令により第三飛行集団長が関東軍総司令官(天皇直隷)隷下の部隊について指揮権を行使することはできない。

南方軍総司令官が統帥の範囲外の部隊に対して指揮権を行使するためには天皇による命令(大陸命)が必要である。ここでは捷号作戦中に 大陸命第一一八九号(昭和十九年十一月二十一日)により第一航空軍司令官隷下の第二一飛行団および飛行第一〇六戦隊を南方軍総司令官指揮下 に置いた例を以下に示す。(その後、南方軍命令により指揮権は第四航空軍司令官に移る)

 

大陸命第一一八九号

天皇の命令(大陸命)があれば、陸軍内のみならず陸海軍に跨った指揮権の移動も可能である。例えば捷号作戦準備期間中に大陸命第一〇八〇号(昭和十九年七月二十二日) により、第一飛行師団・第八飛行師団・飛行第七・第九八戦隊が聨合艦隊司令長官指揮下(各航空艦隊司令長官指揮下)に置かれた。この時の隷属・指揮関係を 以下に示す。

大陸命第一〇八〇号


【戦闘序列と軍隊区分】
戦闘序列とは大命により令された作戦軍の隷属関係。大命で令された戦闘序列を更改するには大命が必要である。
軍隊区分とは作戦上の必要に応じて軍司令官の部署により行う隷下部隊の組み替え。
軍命令では隷属関係は変更できないので、軍隊区分では指揮関係のみを組み替える。
隷属関係と指揮関係(1)で挙げた例について言えば下図のようになる。この場合、軍隊区分で第五飛行集団長から第三飛行集団長への 第一〇飛行団の指揮権の移動が行われる。ただし、このような指揮権の移動は南方軍総司令官の 統帥の範囲内(南方軍命令が有効な範囲内)においてのみ可能である。

【隷属関係と区処関係】
隷属関係と区処関係の例として航空路部隊について以下に示す。捷号作戦準備として比島への航空機集中を 支援するため、兵站総監隷下の陸軍航空司令部が中央航空路部、南方航空路部、第三航空路部、第四航空路部を運用統制した。 このうち、陸軍航空司令部の指揮権が及ぶのは兵站総監の統帥の範囲内である中央航空路部だけである。兵站総監の統帥が 及ばない南方航空路部、第三航空路部、第四航空路部に対してはこれらを陸軍航空司令部の区処下に置くことで運用統制を行った。

 

【直隷】
直隷とは天皇に直接隷属すること。


【直属と直轄】
直属とは固有の隷属関係。軍司令官の隷下にある独立飛行中隊等が、「該当司令官から直接命令を受ける」こと。
直轄とは作戦の必要による臨時の指揮関係。軍司令官に軍隊区分で配属された部隊が、「該当司令官から直接命令を受ける」こと。
戦史叢書第102巻「陸海軍年表」の「兵語・用語の解説」では「軍直砲兵」を例にして以下のように説明している
  「軍直属砲兵は軍の戦闘序列内にある砲兵をいい、軍直轄砲兵は軍隊区分により軍司令官の直接指揮下に ある砲兵をいう」


【親補職】
高級文武官はその任命のされ方によって以下のように区分されていた。
親任官 : 天皇が親任。官記(任命辞令)には親署(天皇の署名)・御璽と内閣総理大臣の副署とがある。
勅任官 : 勅命により任命。官記には御璽と内閣総理大臣の記名がある。
奏任官 : 内閣総理大臣が奏請して天皇の勅裁を得て任命する。官記には内閣の印を押し、内閣総理大臣が記名する。
 武官の親任官は大将のみである。陸海軍大臣、陸軍参謀総長・陸軍教育総監・陸軍航空総監・軍司令官・師団長、 海軍軍令部総長・鎮守府司令長官・艦隊司令長官等は宮中の親任式を経て補職される。これらの職を親補職という。 親補職である師団長は勅任官である中将の役職であるが、その職にある限り親任官としての待遇を受ける。 師団長というのは、このように格式の高い職であった。「天皇から辞令を交付された」のであるから、建前上はたとえ軍司令官でも これを解任することはできない。また、何らかの理由で少將が師団の指揮を執る場合は、その職名は 「師団長」ではなく「師団長心得」(師団長代行)となる。


【動員と復員と復帰】
動員とは、国軍の全部または一部を、戦時態勢(平時の態勢から作戦遂行に対応する態勢)に移すことをいう。 平時から計画されていた。
師団長が動員管理官を務め、その下で動員担任官が作業にあたった。在郷軍人の召集、馬匹の徴発等を実施する。 完結までに2〜3週間を要した。
復員とは、動員の逆で、戦時の態勢にある軍隊を平時の態勢に復することを指す。
各部隊がその復員を終了し平時態勢になったとき、復員完結という。
復帰には二つの意味があった。
  (1) 本来は復員の類義語で、臨時編成の部隊を平時態勢に復することを指す。
  (2) または、派遣部隊がその派遣元(現部隊)に帰ってくることを指す。


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Last Update 2011/02/25